* 香 港 の 屋 台 * (メールマガジンでお届けに上がる商品のほんの一例です。) |
香港の名物である屋台。 その屋台が実は殆ど違法な屋台だというコトはあまり知られて無いかも知れない。 シンガポールでも屋台は勿論違法で、罰金のうるさいシンガポールでは、屋台はみなお行儀良くビルの中や“屋台エリア”みたいな所に収まってしまっている。 香港でも、そういう風にビルの中に押し込められている屋台もあって、それもまぁ、一種カオス、というかCOMPLEX って感じだけれども、やっぱり屋台は路上にいるのが自然な感じがする。 香港の屋台は、屋台って言っても実に色々あって、リアカーで引っ張ってる物から、屋根のある店が密集してあるもの、そして道端に広げてるもの・・・様々な形や様式がある。 売ってるものも食べ物から、衣料品、日用品・・・およそ何でも。 屋台で買えないものは無いんじゃないかと言うくらいに。 ----- そして香港の屋台と言えば、まず女人街(のいやんがい)が有名だと思う。 『頭のてっぺんからつま先まで、女性の物なら何でもそろう』と言うこの屋台通りは、所狭しと並べられた屋台が延々と続く。 人口密度が高く、山がちな香港では、自然、建物が上へ上へと伸びて行く様だ。日本のビルが長四角な感じがするのに対して、香港のビルは真四角に、足りない面積の分、上へ上へと伸びて行ってい感じがする。 これは余分なハナシだけれども、洗濯物もそう。窓に対して日本は平行に物干し竿を置くけれども、香港では窓に対して直角に近い感じで物干し竿を突き出すカタチに出している。なるほど、これなら狭い窓でも沢山干せる。 看板もそう。香港の看板は縦長では無く、通りに対して横長に、突き出したカタチの物が多い。看板のハナシはまだまだあるけれど、今回は泣く泣く割愛。 屋台も例外では無く、上へ上へと伸びる。特に衣料品の多い女人街では上へ上へと服を並べている。服を取る場合には竹の棒で下ろさなければならない。 通りも、通りの両側も、道も、そして空までも商品が並び、その通りが延々と続くのが香港の屋台だ。 ----- ところで、先日、ワタシが香港で住んでいた所のハナシ(は『ジョーダンフェリー周辺の・・・ 』を見てね)をしたけれども、それにも書いたけれども、ワタシが住んでいた通の一本ジョーダンフェリー側の道は市場だった。 道の両側のお店も、食堂、肉屋、麺屋・・・勿論全て開いてて、そのお店の前にも二重に屋台が出て、そして往来の真ん中にも屋台が出て、野菜やら豆腐やら裁縫の道具やら服やら・・・手でウズラを裂いて売ってたり、男物のパンツ(トランクス)を投げ売りしてたり、おばあちゃんがほそぼそとモヤシを売ってたり・・・ まだ市場が開く前、時間が早いと鶏満載のトラックがババーンと乗り入れてたりもしてた。 市場の中の飲茶屋に入ると、おじいさんが新聞を広げてディムサムをほんの1つか2つ取っただけでゆっくりとお茶を飲んでたりしてなんかまったりとして良いムードだった。 日本にも、飲茶屋があれば、お年寄りの楽しみが増えると思うんだけどなぁ・・・ ----------(最初から読む)---------
香港の人は、ご飯を殆ど屋台で済ます人も多いみたいで、それは香港の人が共働きが多いとか作るより安いとか時間がかからないとか、色々理由はあるみたいなんだけれども、 ワタシが住んでたところからちょっとブラブラ歩くと金網に囲まれた、屋根のある食堂っぽい店が密集している屋台街があって、そこは多分違法じゃ無い、ちゃんとした屋台なんだろうけれども、 そこは夜はビールなんかも出してきちんとした食事が出来て、それで朝は朝で朝食を出していて、香港の人がよく朝に食べる“マカロニスープ”(正式な名前を忘れました。)を 黄色い学校お帽子かぶった小ちゃい子と、スーツのお父さんが一緒に食べてたりしてて、そのマカロニが入っている、屋台の、あのオレンジ色したハデなプラスティックスのお皿と、 黄色いお帽子とが、薄汚れた金網の向こうでひときわ目立ってて、なんか、そんな一家団欒というか、一家の日常が道端の屋台で、それこそオープンに行われてて、こんな言い方は失礼かもしれないけれど、そんな光景は、ちょっと面白かった。 ------ ワタシが住んでた一本辻違いの市場は、先にも書いたけれど主に食料品を売っていて、まず道の両側にある麺の量り売り屋さんとかお肉屋さんとかは一日中やってたけれど、 その内側(道の真ん中方向)に二重に出ている屋台や道の真ん中に出ている屋台は可動式で、朝と夕方がメインでやってて、で、朝晩では屋台の種類も若干違ってたと思う。 朝はやっぱり野菜を売る人が多かったかな。季節によって、夕方にはあまい豆腐(あったかいお豆腐をすくってあまい蜜をかけて食べる)なんかも買い食いできた。 で、あの日は、朝だったんだろうか、夕方だったんだろうか。多分、朝だったと思うんだけれど・・・ その頃になるとワタシは、大分香港にも市場にも慣れていて、麺でも野菜でもなんでもちょっとづつ量り売りで買って自炊したりもしてた。 市場数字も考えなくても判る様になってたし、以前『旅の、ことば。べらべら編 』にも書いた事があるけれども香港(中国)の人が使う「指数字」も、もうまるで子どもの頃から使っているかの様に身に染みついていた。 ------ ところで、「指数字」も「市場数字」も、ワタシが考えた呼び方で、本当はちゃんとした言い方があるんだろうけれど、まぁこの二つを押さえる事ができれば香港の旅はもっともっと面白くなると思う。 「指数字」は前も書いたけれど片手で1〜10の数字を表せるスグレ物。是非、地元の人に教わってみよう!そして「市場数字」はパッと見、ちょっと記号みたいな感じのする数字だ。 これは市場で野菜の山の中やザルに入れた魚の脇なんかに良く刺さってる短冊に書いてある数字で、よく市場で見かけるからワタシが勝手にそう言っているだけなんだけれど、 日本でも商店街なんか行くとよく竹のひげなんかにマジックでゴーカイに数字が書いてあるけれども、アレと同じで、でも書かれている数字が香港にいても普段はあんまり見かけない変わった数字で表示されている。 「指数字」もそうだけれど、この「市場数字」も多分漢字から変化していった物だと思う。良く見て比較してみると面白いし、早く覚えられるので是非漢数字との比較を楽しんでみて下さい。 ----- で、ハナシがまた飛んじゃったけど・・・ その日もワタシはいつもの様にかしましい市場で買い物をしていた。 で、その頃はもう大分ワタシは香港に馴染んでいて、まぁ、そりゃ香港の人の目から見たらワタシはやっぱり「変なヤップンツァイ」(ヤップンツァイについてはこちらに)なんだろーけども、まぁそれにしたってこうしてボられる事も無く、普通に市場で買い物出来てる訳だし、お粥屋のおばちゃんにも顔を覚えてもらったし・・・ 香港人にはなれないけれども、「香港に住む人」に近づいてはいた様な気は(自分の中だけでは)していたのだ。 ----------(最初から読む)---------
で、その日も活気あふるる市場の中で何か買い物をしていて、人の波にただよいながら、何かの屋台を物色していたのだ。 と、その時、急に男の人の怒鳴る声が聞こえた、と、思ったら、 1、 2、 3! で、その市場はゴーストタウンになってしまって、さっきまであんなにワタシの前に、後ろに、右に、左に、あふれかえっていた野菜も、肉も、鶏も、Tシャツも、ソレを載せてた台も、ソレを売ってた人達も、ソレを品定めしてた人達も、 みんなみんな何処かへ消え失せて、ワタシだけが只、道のまんまん中で、ボーっと立ちすくんでいた。 ・・・良く見ると、市場の入り口の方で制服を着た男の人にとっつかまってるオジサンがいて、オジサンは半分移動しかけた屋台を抑えられて何かお小言を言われていた。 ------ (これが、香港名物「瞬間移動」かー・・・初めて体験した・・・) そうなのです。香港の屋台はあれだけ有名なのに、最初に書いた通り、その実その殆どは違法な屋台なのです。 それでオマワリさんや、日本で言う保健所の人がたまにガサ入れをして、その時は皆一目散に屋台をたたんで逃げてしまうのです。 本当に、一瞬で、3つ数えるウチに、まるで空間に吸い込まれて行く様に、売り物やなんやかやがみ〜んな、近くの店や、路地にリレーされて吸い込まれてっちゃうんですヨ。 まるでスローモーションの様に、ワタシの足元の、目の前の、横の、後ろの品々が運ばれてゆきます。でも運んでるおばちゃんは、おっそろしく必死な顔してたりするんですよネ。当然なんだけど。 でも、見事なもんです。だってあれだけあった屋台で、結局つかまったのは、市場のはいり口の屋台、そのたった一件だけだったんですから。 ・・・ワタシはその「瞬間移動」のハナシは知ってはいたのですが、それまでまだ体験した事が無くて、その日はやっと体験することが出来て、深い感動を覚えました。 でもそれと同時に、リレーに加わらなかった、そして逃げもせずにボーっとしていた自分を思うと、 「やっぱワタシはまだまだヨソ者なんだな〜・・・」 と思わずにはいられませんでした。 ------ 例えば、先にご紹介した「女人街」なんかはそんな摘発なんて無い屋台街だと思うのですが、あまり有名で無い、特に食料品を扱う裏通りの市場なんかに入り込んだとしたら、 もしかしたらあなたもそんな「瞬間移動」に遭遇するかもしれません。(ちょっぴりマトリックス気分ですヨ。風景は香港ですが。) 市場に入らなくても、結構大きな通りなんかでは、たまに、えっほえっほと屋台のリアカーを引いて逃げるオジサンなんかを見かける事があります。 返還後の今も、みんな相変わらず逃げてるんでしょうか・・・ |