* 旅の、ことば。べらべら編 *
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 人から、

「旅の途中、ことばはどうしていたの?」

とよく訊かれる。その質問が来るとワタシは大抵

「そりゃもぉ、流暢な、流れるようなボディーランゲージ。」

と答えている。

 しかし、コレもあながち誤りでは無い、っていうか、ボディーランゲージは難しい。

以前、『タイ初体験・前編』で、タイで現地のおばちゃんに、『トイレに行きたい!』というのを身 振り手振りで伝えようとして、イスをすすめられてしまった、などとい うシャレにならない体験をしたという事が書いたが、慣れないと、ボデ ィーランゲージこそ難しいとワタシは思う。

豪州のレザーブティックで働いていた(不法就労)時も、ワタシがお店の同僚やボスに『ちょっと来て来て!』と手招きすると、相手はすごく複雑な顔をした。

英語圏の「オイデオイデ」は、手の平を上に向けて手をひらひらさせる。

日本の、手の平を下に向けて手首から縦に「オイデオイデ」をするのは、英語圏ではどちらかと言うと「シッシッ」と相手を追い払っているニュアンスになるのだ。

その為、ワタシが笑顔で「シッシッ」をやると、「シッシッ」と追っ払われた不快感と、ワタシの明らかに何か伝えようとしている笑顔とで『???』となって、相手は複雑な顔になってしまうのだ。

かように、ボディーランゲージというのは案外バカに出来たモノでは無いのである。

しかし、逆に(ことばはともかく)その国の特徴的なボディーランゲージというか、『こう来たら、こう』という受け答えのテンポというか、動作を覚えておくと有効だ。

例えば英語圏の国で、自己紹介をしようと(え〜っと、初めての時は何 だっけ?ないすちゅーなんとか・・あ〜ええ〜と、はわゆーでいいのか な?名前は・・・ええっとまいねーむいず・・・)とか考えながら固ま って「あ〜」とか「う〜」とか唸っていると、相手はワタシが一体何を したいのか、一体、何をやり出すのかすごく不安になって怪訝な顔をさ れかねない。

そんな時、日本語で「ちはるですっ」と大きな声で言いながら、笑顔でさっと右手を出せば、相手は(ああ、自己紹介したいんだな)とさっとその右手を掴んで笑顔を見せてくれるだろう。

棒立ちで「ないすちゅーみーちゅー、まいねーむいずちはる」と言うよりも、ずっとスムーズだと思う。

かく言うワタシは殆どソレで旅をしていた様なモノである。

香港にいる時、宿屋で知り合った日本の人をつれて食事に案内したことがあったが、その人達から

「どうやって、そんなに広東語がべらべらになったの?」

と驚かれた事ある。しかし、それは大きな誤解であってワタシは広東語なんて全然しゃべれない。いくつかの単語を知っているだけだ。しかし、ワタシが香港であまり不自由した事が無いのも事実だ。

例えば、飲茶に行ったとする。
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(1)ワタシ達がお店に入ると、いきなりお店の人が何かけたたましくしゃべりかけてくるので、ワタシは間髪入れずに右手を出す。

すると相手は席に案内してくれるから、すみやかについていく。

(2)席に着いて、さて、イスに座わろうとすると、又お店の人に何やらわめかれるから、「ぽ〜れい」と一言。

(3)席に着いたらお茶で食器類を清めて食事開始。

(4)何か食べたい大皿があれば注文して、ディムサム(点心)を食べたいときは、カートを押しているおばちゃんを「んごーい」と呼び止める。

(5)食事が終わったら「んごーい、まいたーん!」と叫んでお店の人に計算をしてもらい、チップ込みのお金をテーブルに残して帰る。

お腹一杯嗚呼満足。
解説すると、

(1):大抵の旅行者はお店に入るなりなにか怒鳴られるので、大抵ここで圧倒されて後ずさりしてしまうが、店員さんが聞いているのは、大抵人数なので、ここでは黙ってすみやかに指で表示すれば良いのだ。

中国の人の数の数え方は、片手で1〜10迄表現出来るので、とても優れている。この指の数字は市場で買い物をする時なんかも大助かりだから是非、覚えておく事をおすすめする。

市場などでモノの値段を聞いたり、量り売りの目方を聞いたりされる時も、相手は指で示してくるから、こちらはそれより安い数字(目方の場合は高い数字)を指で示せば値切りの第一歩である。

余談だが、印度の人は数を指の節で数えたりして各国で特徴があるので、現地の人に聞いてみるととても面白い。

(2):は、お茶の銘柄を聞いている。だからお気に入りのお茶の名前を覚えておいて、それを言えば良い。(ワタシの場合は「ぽ〜れい」茶。)

これも余談だが、日本の人は大抵ジャスミン茶を頼むようだがそれはちょっとダサい。ワタシも香港でやぶからぼうにジャスミン茶を出されるとバカにされているのがミエミエでむっとする。

前、NHKの中国語会話で月に一度『広東語会話』をやっていたが、その講師の人がさえないオッサンのくせにすごくおもろい人で、例文が全て「飲茶」の仕方でびっくりした。

普通、外国語会話の例文って、「花屋さんはどこですか」とか「白いお 家が見えました」とかじゃん?(豪州の英語学校ではヒッチハイクした という設定で「靴を脱いでもいいかい?」「今日は暑いから止めてく れ」というのがあって、それもたまげたが。)

ところがその先生は、シュウマイの頼み方とか、肉まんの頼み方とか、 そんなんばっかで笑えた。その中で「日本の人はたいていジャスミン茶 を注文しますが、これはダサいので止めましょう」という注意があって、 TVの前で(NHKの語学番組でこんなコトやっちゃうなんて)『ん〜、この オッサン、タダ者ではないな』等と唸っていたものです。

勿論、ジャスミン茶が好きならそれを注文しましょう。(「香片茶」で良かったかな?漢字、発音ともに忘れてしまいました(^_^;)。)

(3):コレについては機会があったら又後日。やらなくても大丈夫。周りの人を観察してみましょう(^-^)。

(4):「んごーい!」は日本語の「すんませーん」英語の「Excuse me」に当たる汎用的に使えることばでコレも覚えておくと便利。「んごーい」の「ご」は「こ」と「ご」の間「こ°」って感じで発音するのがコツデス。

(5):「んごーい、まいたーん!」は「すんませーん、お勘定!」ってコト。(2)で書いた『広東語会話』ではこの「んごーい、まいたーん!」も何度も繰り返し繰り返し発音の練習をしていておもしろかった。

以上、この一連の動作で、ワタシは3つのことばしか使っていない。「広東語べらべら」と誤解された時は、「飲茶」じゃなかったし、ボられそうになったのを未然に防いだりしたから、もう少し別のことばも使ったが、まぁ、同じ様なモノだった筈だ。

第一、使おうにもワタシは広東語の文法を全く知らないし、語彙も全然無い。

只、わずかなフレーズと、後は「ボケ・ツッコミ」の様な香港独特のテ ンポと、指数字を初めとする少しのボディーランゲージ≒その場にあっ た現地の人の動作、を覚えていただけなのである。

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そうそう、香港と言えば、日本人宿屋に長居している時、こんなコトがあった。

ある日、その宿屋に日本人の学生さんがグループで泊まりに来て、宿の長椅子に座っていた。その中に金髪の独国人の男の子もまじっていたのだが、ワタシはパッと見、それに全然気付かなかった。

当時はまだ茶髪なんかめずらしく、金髪の彼はとても目立った筈なのに・・・彼はするっとその団体に違和感無く「なじんで」いて気付かなかったのだ。

後で聞くと、彼は日本にずっとホームステイしていたのだという。彼は金髪でも青い眼でも、その時はきっと身のこなしが日本人になっていたのだろう。

多分、ボディランゲージがわかるって、その国の文化がわかるって事なんだと思う。

・・・スマートに外国語を操って会話するのもカッコいいけれど、ボディーランゲージも真面目に考えると結構奥が深い。決してバカに出来ないなって思うのです(^-^)。

『初めての外国だったけど、身振り手振りで何とか通じたよ!(^▽^)/』

コレってすごく立派なコトだと思うし、

『もぉ、英語なんて出来ないから、手なんかこんなんなっちゃって、恥ずかしいけど全部ボディーランゲージだったよ。』

これもちっとも恥じるコトなんかないと思う。スゴイよ(^-^)。

ことばと同様、ボディーランゲージも意外と通じなかったり、誤解を受けたりするコトがあるかもしれないけれど、それは「会話」。相手の居るコトだから相手とのやりとりでなんとかなって行くと思います(^-^)。恥ずかしがらずにれっつぼでぃーらんぐぇーぢ!

但し、モノを買う時とか何かを契約する時などは、必ず紙に、できる だけ具体的かつ簡単な単語で書き示して、何度でも金額や条件を確認し た方が良いと思いますけど。)