前回のお話はこちら。
ワタシはその頃9万弱のお給料で2万位の元物置小屋だったというオンボロ長屋に住んでいて(なにしろ、夜中風でドアが吹き飛んでしまう位だった。今思うとうら若い乙女があんな所に住んでいて、よく何事も無かったモノだ。)お金が無かったので、商社マンで海外に沢山行っているとの誉高い主任のご主人サマにスーツケースをお借りした。
そう、その頃はバックパックとかリュックとかましてや風呂敷なんかで海外をウロウロする、なんてコトは全く念頭にない。外国=ごろごろ運ぶスーツケース!これでキマリъ( ゜ー^) だったのだ。
んで、母に「香港に行く」と言うと彼女は売られてしまうだの、強姦されるだの、マジで言ってるっていうかもぉヒス起こしてる。
「おかーさん、ツアーって知らないの?ツアーって。もーワタシはなーんにもしなくていーのよ。なーんにも心配しなくていーの。だまーってついていけばみーんな案内してくれるのよー」
と意気揚々と一路、香港へ・・・
着いた香港は夜で、空港の前に立っているだけでもなんだかコワい気がした。約束のお迎えが来る筈なのに、来ない。
実はワタシ達二人は(今思うと)結構無理矢理ツアーで、とういのもワタシ達の地域では、ツアー客がワタシたち2人だけしか集まらず、しょうがないのでとなりの県のツアー客の人達にくっついて行くことになっていた、いわばおミソ・ツアーだったのだ。今思うと恐らく上司が口をきいてくれていたのだろう。
「なーんにも心配いらないから。ふつーのツアーと同じだから。添乗員さんに付いていけばいーんだから。」
人の良い上司はそう言っていたが、現実は甘くはなかった。
そのトナリの県の添乗員の人達は、ワタシ達のコトなどハナから念頭に無かったらしく、さっさと自分たちのお客サマを連れてホテルへ行ってしまったらしい。お陰で出迎えも送迎もチェックインも無し。ワタシ達は初めて降り立つ彼の地でボーゼンとしたものだ。しかもどんどん夜はふけて行く・・・。
それでもなんとかやっと空港からホテルにたどり着くと、今度はホテルのチケットが無いらしくチェックインさせてもらえない。すったもんだでチェックインが出来ると、今度はバスの運転手に部屋に上がり込まれてしまう。その上勝手に食事に行く約束をさせられてしまい、ワタシ達はそれが心底怖かったので、ロビーに彼の姿を見つけると一目散に夜の香港の街を走って逃げたのだ。
モチロン、走りながらワタシのアタマの中では、母ぁちゃんの数々の脅し文句がリフレインしていたコトは言うまでもない・・・
つづきはこちら。
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