◆ かたくなるココロ1/2・きっぷ ◆

 2月25日、渋谷の駅で切符の買い方が良く解らなくて、ワタシは千円札を剥き出しで持ちながら路線図を見上げてぽーっとしていた。千円札を持っているのはスグ切符が買えるからなのだが(こうでもしないとトロいワタシは都会のスピードについて行けなくて、ワタシの後ろ、券売機はすんごい行列になってしまうのだ。)千円札を用意する以前に、モノゴトは一向にスピーディには進んでいなかった。

 なにしろ、路線図の中に「渋谷」がめっかんないんだから、しょうもない。んで、ぽぽーっと上を見上げていると、イキナリ10時の方向から声をかけられた。

 見ると見知らぬおばさんが立っていて「アナタ、東横線に乗ります?」と尋ねられた。ワタシは怪訝な顔をしながら「ええ」と答えた。なんか、そのつもりはないのだろうけれど、ワタシの行動を、なーんか探っているよーに感じたからだ。
 帰省先にいる時のワタシはそんな怪訝なカオはしない。ワタシの帰省先は見ず知らずのおばやんに話しかけられるコトなんざ、日常ちゃめしゴトなのだ。

 ふっふん。(そうじゃないって)ええと、そうか「東横線乗ります?」「ええ」だ。

おばやん>「じゃ、この切符あげます。」

ワタシ>「へっ」(今、アタシ細かいの無いよー!どーしよ)

おばやん>「お金は要りませんから、ね?」

ワタシ>「へっ?!」

おばやん>「これ、○○(駅の名前)までしか何だけど、○○までなら行けるから」

ワタシ>(おばやんに切符をおしつけられる)「あ、あ、すみません・・・」

ワタシ>「あ、今細かいの無いんです・・・」と、どっかに両替機がないかな(ある筈無い)とワタシが振り返った隙におばやんはワタシに切符をサッサと渡しサッサと踵を返してサッサと人ごみを歩くのが上手な「都会の人」になってサッサと行ってしまった。


 その後姿に「あ、どうもありがとうございます」と言ったが、そんなの全く受け付けないわよ、もう、私が話しかけたと言う事も無かった事にしてちょうだい、という様におばやんはもう群集の一部に溶け込んでしまっていて、まるで足で歩いて無いかのように人の波に漂って行ってしまった。


 おばやんは一度も振り返らなかった。



 「もっと、ちゃんとお礼が言えたのに・・・なんで言えなかったんだろ・・・」

 券売機の人ごみの後ろでワタシは見えなくなってしまったおばやんの姿を見ながら思った。

「・・・又だよ。」

    「かたくなるココロ2/2・でんわ」へつづく。

◆ 改築記念 02月09日〜15日 1999 ◆